答えのない問いかけ。
「尊厳死」は
認められるのか否か。
考えれば考えるほど、
答えが出せない。
「生きることは素晴らしい」
「生きることには意味がある」
僕もそう思う。
つらいことはあっても、それを補って余りある程の
幸福感と自由を感じられる今だからからこそ
そう思えるのだろう。
この映画の主人公ラモンは、人生を謳歌していたある日
事故で四肢麻痺になり、それきり動けない。
家族の愛に支えられているものの
その絶望感は計り知れない。
彼は弁もたつので、人からの理屈には
意固地になるだけ。
心からの愛情には、返せないことに苛立ち
余計に死を選ぼうとする。
兄の妻マヌエラによる献身的な介護とまなざしは
さながら母親のようでもあり、とても暖かい。
ちょっと賢くない甥っ子ハビの
放ってはおけないが、振り回されて面白くないという
複雑な心境も伝わってくる。
そんな家族と彼を見て、兄ホセが苛立つのも良く分かる。
男運がないと言いながら
次第に彼に惹かれていく、二人の子持ちのロサ。
尊厳死を法的に支援する会のジェネ。
決して死ぬことを手助けするわけではなく、
いかに生きるかを真剣に見据えているのだと思う。
ラモンに「他のみんなと同じだね」と言われた彼女は
とても可哀想だった。
あんなに一所懸命やってくれた人への最後の言葉がそれとは!
不治の病を抱えつつ、彼の弁護を引き受けるフリア。
病気の進行に怯えながら、
夫がいる身でありながら、隠し切れない愛情さえ芽生えていく。
ラモンの周りには、様々な不器用な思いと愛情がある。
生きていたいから、愛したいからこそ
死を選び、愛を拒絶する。
関われば関わるほど情がうつり、離れ難くなるのに…。
「普通なら生きることは権利だが、僕には義務だった」と語るラモン。
「生きる」とは、一体何なのだろう?
…結局、答えなんて出ない。
エンドロールでは、高らかで力強い曲が鳴り響く。
深い余韻だ。
主人公が聖人君子ではない部分がリアルで
決して好きにはなれないが魅力的だった。
感傷的ではない描き方が、好きだな。
主演のハビエル・バルデムって、僕と同い歳なんだよねぇ。
特種メイクとはいえ、あの貫禄。
おみそれしました(笑)。