そんなに好景気という印象もなかったのだが
猫も杓子も、
とりあえず「不況」と言っていれば間違いない09冬である。

人とのつながりも危うい昨今、
なまぬるいくらい優しいと思える作品に出会えた。

『ラ-スと、その彼女』だ。


ダッチワイフに恋する主人公と
その周辺の人たちの物語である。

主人公・ラ-スの奇異な行動に対して
最初は優しさの押し付けもあるのだが、
だんだんと、それぞれがイイ距離を模索し、彼を受け入れていく。

その変化とさじ加減が絶妙。
ときおり笑いを交えたストーリー展開もイイんだなぁ~♪


映画を見慣れた人や深読みする人は、
きっと裏切られたり事件に巻き込まれるに違い無い!と思うはず。

ところが、この作品では人の悪意には話を広げない。
タイトルが示すように、主人公の変化に主軸を置くのだ。


『ラ-スと、その彼女』という邦題でこそ分かりづらいのだが
原題は『LARS AND THE REAL GIRL』。

まさに、恋に恋する少年が
現実の恋へと目覚める過程を描いていたことに気付かされる。

雪が舞い散るなか手袋をはずして握手する。
ただそれだけのシーンの、なんと温かいこと。


結末に対して酷評もあるらしいが
ダッチワイフに恋する変態男という切り口から
それに見合わないほど純粋な作品に仕上げたということで
僕はこの作品を評価したい。

人の裏側を描く作品は、確かに見応えがある。
上っ面だけを描くのは薄っぺらいというのも分かるけど、
こういう裏表なく素直な人たちが街にあふれたなら素敵ではないか!


疑心暗鬼におちいり楽しめなかった人や、
刺激を求めたい人は、他の作品でどうぞ。