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穏やかで
優しい。

淡々と過ぎて行く
一日のようである。

大きな事件はないけれど
その中での、こころの動き。
幸せな笑顔。

くり返す日々が
無駄ではないと思える。そんな作品だ。


――ここから、映画とは関係ない話しをしますね。

もう、20年近くも前の話し。
ある夜、父が血だらけになって帰ってきた。
外は激しい雨。うろたえる母。

どうしたのか聞いても、どうも要領を得ない。
とりあえず手当てをし、
しばらくたってから父は言った。

「あれ?どうしたんだ?いつ帰ってきたんだろう?」

最初は気が動転しているのだろうと思ったが
数分後に、また同じセリフ。
そして、また数分後に…。

これは、おかしいということで救急病院へ。

雨の中、自転車に乗っていた父は途中で転倒。
そして頭部を強打したらしく、
短時間の記憶障害をおこしてしまったのだった。
手術も無事成功し、
幸いにも大事にはいたらなかったのだが
その時の家族の心痛は、ただ事ではなかった。

もし障害が残ってしまったとしたら…
そう考えると、今も恐ろしい。


――お待たせしました。
  ここから、映画の話しに戻ります。

この映画は、
記憶が80分しかもたないという数学博士と
子持ちの家政婦の話しだ。

寺尾聡が演じる博士は、
記憶障害がなくても一風変わった人に見える。
数に対する情熱は激しく、子供のような部分もあって
どことなく愛らしい。

家政婦は深津絵里ちゃん。
母親というよりも、
歳の離れた姉みたいにも見えるが
その友達のようなやりとりも可愛らしい。

そんなほのぼのムードの中の
浅丘ルリ子さんのたたずまいの見事さといったら!!
尻の穴がキュッと締まるような緊張感。
さすが女優の貫禄!!!

家政婦の子供が成長し、
数学教師となった√(ルート)くんの授業という形で
物語りは進む。
大人の√くんは、吉岡秀隆くん。
その諭すような口調が、とてもイイのだぁ~!!
僕は数学が苦手だったけど、無機的な勉強ではなく
あんなに人くさく数式を教えられたら
もう少し楽しく学べただろうなぁ~。

80分前とまではいかなくても
記憶は薄れいくもの。
分からない明日を心配するより、今日を生きてみよう。
それも、気張らずにね。

気持ちが、ゆるやかにほぐれるイイ作品でした。